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トイレ収益化への道(2)

2011/5/1

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お詫び
3月11日に発生した東日本大震災の影響により、当初4月1日に予定していた記事掲載を遅らせて頂きました。

□トイレ収益化の意義
トイレはどのような場所であっても公共物的性格が強く、トイレを利用することに対して対価を払うという意識は総じて低いといえるだろう。よって、最近少しずつ出現してきた有料トイレも、法外な利用料を設定することはできず、トイレ単体で利益が生める水準とはいえない状況である。
但し、これまで維持管理費のすべてを負担していたトイレ運営者にとって、その一部でも利用料でまかなえることは、トイレの設備、環境水準の維持などの点で、非常に意義のあることといえるであろう。これは広告収益、物販収益においても同様のことがいえよう。また、これまで利用料を払う意識が皆無であったものに対し、その額が少額であっても支払うようになることは、何より利用者の意識の変化が生じている証でもあり、大きな意義といえるであろう。

□トイレ収益化の形態
前回のコラムでは(1).トイレへの広告掲出 (2).トイレの有料化 (3).トイレでの物販 の3種類を挙げた。それぞれ既に一部では取り組みが始まっているものであり、ご存知の方も多いだろう。

(1).トイレは多くの人が立ち寄る必要がある場所であり、比較的滞在時間も長い。このトイレ内に広告を掲出するというもの。男女で別の場所を利用するため、ターゲットを絞った広告掲出が行える点も大きなメリットの一つ。広告の内容もさまざまで、個室内や男性用小便器前にディスプレイを設置し広告を配信するものから、トイレットペーパーに広告を掲載するもの、洗面鏡やペーパータオルに広告をアレンジするものまで幅広い。
反面、利用者が少ないと広告としての価値がなく、広告がつかないケースがある。また、トイレの清潔さが確保されていない場合にも、広告媒体としての価値が下がり広告がつきにくい。事実、ある自治体が管理する公衆トイレに広告スペース(ディスプレイ)を設けたところ、利用者数と広告料金の点で、広告がつかないといったことも起きている。トイレへの広告掲出は前例が少ないため、広告収入を予測しにくく、特に広告配信をディスプレイなどで行う場合は、端末費用、工事費用などの投資額と広告収入が釣り合わないこともある。

(2).トイレの利用に対し利用料の課金を行う方法である。海外では一般的とも聞かれるが、日本ではまだ採用しているトイレは少ない。前述の通り、トイレを利用することに対して対価を払うという意識は総じて低く、小売・サービス業などでは客に提供するサービスが低下したととられることも一因であろう。
この方法は利用者に利用料を課金する点で、利用数に対して確実に収入が見込めるが、都度発生する利用料を確実に徴収するシステムの運用が不可欠である。トイレに入る人を認識し利用料を徴収、徴収完了した人がトイレの中に入れる仕組みと、そのメンテナンス、また、都度発生する現金の管理が必要であり、これらの設置、運用コストを考えれば、有料化しても利用者が多く見込めるような、相当規模のトイレでないと導入は難しい。
また、トイレの利用に対し対価を求める以上、トイレの清潔さも一定水準以上のレベルに維持しておくことも求められる。通常のトイレに対し清掃回数を増やすなどの取り組みも行う必要があろう。

(3).トイレ内必要性が高いちり紙や生理用品などを販売するもの。首都圏では駅にトイレットペーパーが設置されてから販売機が減ったが、鉄道駅のトイレなどではトイレ内にちり紙、生理用品の販売機を目にすることも多い。
これらは、簡易な販売機で実現させることにより、投資、維持コスト極小化し、モノを販売することで、利用者は商品代金を払うことによる違和感が生じない。また、トイレ個室内にトイレットペーパーが用意されていなければ、実質的に利用料のような性格にもなる。ここで発生する運営者側の負担は、当該の販売機の維持と販売機で販売する商品の補充くらいである。
また、最近ではちり紙や生理用品にとどまらず、さまざまな商品を販売するケースもある。例えば、女性用トイレは化粧スペース、パウダールームの整備が進んでおり、利用環境は飛躍的に向上している。これに合わせて化粧品などの販売も行われているトイレもある。このように、今後、関連するさまざまな商品がトイレで販売されるようになるだろう。

以上の3つとも、収益化のための研究が行われている段階から脱しているとはいえず、積極的に導入が進んでいるとは言えない。ただし、トイレを収益化することは、今後の日本において清潔で利便性の高いトイレが維持されていく切り札でもあろう。今後、適所において一層の導入が進むことを期待しつつ、別のスキームによる収益化の方法が確立されることも願いたい。

REST.jp編集部